2015.11.28

ドイツのニュルンベルクからの帰りの空港にて日記をつける。一週間分なので印象的な部分のみ抜粋。

13年ぶりにドイツに来たのだけれども、全く違和感が無い。言葉も思っていたより忘れてなかった。リラックスするのも早い。やはり生活をしていたという事は影響が大きい。

父の仕事のモーターメッセに着いて行って見学。技術とアイデアと熱意が結晶化した部品は、美しかった。真理と美は一体だと思う。曼荼羅とか幾何学とか数式とか経文とか。そういうものがあんなにも美しいのは、そこに真理があるからなんじゃないだろうかと、全く理解出来ない部品などを見ながら浅く考えていた。こういう普段全く関わらない分野は、思い込みが無く透明な眼差しで観るため、かえって参考になることがあるように思う。どんな分野にせよ、向かう一点は同じはずだからだ。そしてそれは、人間の幸福度の向上に他ならないと思う。

首切り役人の家Henkehousを探す。尋ねる度に、何であんなとこに行くんだ⁈と聞かれる。首切り場なら絶対行かないのだけれども、役人の家というところに興味があった。その人の生活を垣間見てみたかったのである。
まあ確かに、防寒で着膨れし、ドイツ人から見てかなり若く見えるであろうニヤニヤした顔つきの小柄な日本人の女が、一人で首切り役人の家を聞いていたら、不気味になるかバカなのかと心配になるかのどちらかであろう。しかしあんまり言われるのでさらに意気揚々と行ったが、休みであった。期待するとこうなることが多い。
新美術館。白黒のリヒターの作品がとてもいい。冴えていた。建築も素晴らしかった。ミュージアムショップもよい。この後3回行く。

世界人権宣言が29本の柱に刻まれた通り。天井があるような造りなのに、そこには敢えて何も無く空が広がっている。装飾が全く無いただのコンクリートの円柱にシンプルな文字だけが刻まれている。その潔さに、人権宣言に至るまでの膨大な時間と意思を感じた。今はもう立ち止まる人も少ないようだ。人権ということをもう一度考えなければならない時だと、ふと思った。

真面目風な旅の雰囲気を醸し出してしまったけれども、基本的には毎日ソーセージとビールで満腹になり一人でヘラヘラ街を歩いていただけである。今も羽田空港で炭酸水飲みつつおかきを食べながら日記を付けている。暇なのに人権のことなど、全く考えなかった。こういう風に人は平和ボケしてゆくのだな。実のところ、世界は全く平和ではないのだけれども。

東京は温い。耳が千切れるくらい寒かったドイツが既に懐かしい。何だか帰郷したような気分の旅であった。